反復性肩関節脱臼とは?
肩関節は一度脱臼すると、関節の安定性を保つ組織(靭帯や関節唇)が損傷し、肩が繰り返し脱臼する「反復性肩関節脱臼」の状態になることがあります。この状態が続くと、日常生活やスポーツで脱臼を繰り返し、関節の変形やさらなる損傷を引き起こす可能性があります。
関節の不安定性が強い場合やスポーツ復帰を希望される場合には、手術を推奨することが多くなります。
鏡視下バンカート修復術とは?
バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節唇が剥がれてしまう損傷のことを指します。関節唇は肩の安定性を保つ重要な組織のため、これが損傷すると脱臼しやすくなります。
「鏡視下バンカート修復術」は、関節鏡(カメラ)を用いた低侵襲な手術方法で、剥がれた関節唇を元の位置に戻し、アンカーと呼ばれる小さな器具を用いて骨にしっかりと固定することで肩の安定性を回復させます。
鏡視下バンカート修復術のメリット
• 小さな傷で手術ができる(低侵襲)
• 回復が比較的早い
• スポーツ復帰を目指せる
しかし、骨の欠損が大きい場合や関節の緩みが強い場合には、再発のリスクがあるため、より強固な安定性を確保する「鏡視下バンカート・ブリストウ手術」が選択されることもあります。
鏡視下バンカート・ブリストウ手術とは?
ブリストウ手術とは、肩の安定性を高めるために肩甲骨の一部(烏口突起:うこうとっき)を移植し、骨と腱の両方で肩の安定性を強化する手術です。これにより、関節の前方脱臼を防ぐ効果が得られます。
「鏡視下バンカート・ブリストウ手術」は、このブリストウ手術を関節鏡を用いて行う最新の技術です。従来の方法では大きな切開を伴う手術が必要でしたが、関節鏡を用いることで、より低侵襲かつ精密な手術が可能になりました。
鏡視下ブリストウ手術の特徴
1. 烏口突起の移植
• 肩甲骨の一部である烏口突起を切り取り、関節の前方に移植することで骨欠損を補い、肩の安定性を強化します。
2. 腱の補強効果
• 烏口突起には筋肉(烏口腕筋や上腕二頭筋短頭)が付着しており、これらの筋肉が関節の前方を保護する役割を果たします。
3. 鏡視下での精密な手技
• 関節鏡を用いることで、低侵襲かつ、より正確な骨移植と固定が可能になります。
鏡視下バンカート・ブリストウ手術のメリット
• 低侵襲でスポーツや職務の早期の復帰に期待ができる、回復が早い(従来の切開手術に比べ、傷が小さく術後の痛みが少ない)
• 高い安定性を確保(バンカート手術単独よりも脱臼再発率が低い)
• 早期スポーツ復帰が可能(格闘技、ラグビーや柔道などのコンタクトスポーツにまで対応しやすい)
デメリットと課題
• 高度な技術を要する(関節鏡を用いた鏡視下バンカート・ブリストウ手術は非常に精密な技術が求められるため、経験豊富な医師のもとで行う必要があります)
鏡視下バンカート・ブリストウ手術の良い適応
・脱臼するリスクの高いスポーツをする方
・職業上、再脱臼のリスクを許容しない方(警察官、自衛官、消防隊員など)
・一度バンカート法を受けたが、再脱臼してしまった方
・関節の受け皿の骨欠損が大きい方
治療方法の選択は、患者さんの肩の状態、骨欠損の有無、スポーツ活動のレベルなどを考慮して決定いたします。当院では、専門的な診察を行い患者さんにとって最適な治療を提供いたします。
手術が適切と判断した際には森山弘朗医師が、久留米大学医療センターにて鏡視下バンカート(鏡視下バンカート・ブリストウ)手術を執刀致します。
肩の不安定感や脱臼を繰り返してお困りの方は、ぜひご相談ください。